≫ベッドメイキング≪
「よいしょ!」
掛け声と一緒にシーツを広げる。
まるでシフォンケーキのように膨らんだそれは、次の瞬間にはすうっとベッドを覆った。
皺を付けないように気を付けながら、端をスプリングの下に折り入れ、
「よし!」
私は満足げに手を叩いた。
ベッドメイキングはもはや私の趣味だった。
うじゅうじゅとお布団に包まっているのも大好きだけど、
こうして綺麗にするのはもっと好き。
なんだか気持ちもぱりっとする。
「そろそろ冬だし、シーツアイロンもしちゃおっかな〜」
シーツにアイロンをかけると、一流ホテル並みの仕上げができる。
でもその熱のために、あまり夏には向かない方法だ。
「うん!やっちゃおう!」
そうと決まれば善は急げ。
私はアイロンを取りに行こうと振り向いた。
「って、!?」
寝室の入り口に立っていたのは、寝惚け眼のその人だった。
まだ完全に頭は動いていないようだったけれど、拗ねたような表情で口を開いた。
「なんや、ひどいやん。俺んことリビングに放置して、こんなとこで…なにしてんねん」
ベッドメイキング、とだけ簡単に答えると、私は慌てての傍に行く。
心なしか尖った唇はまだ何か言いたげで、誤解を解く必要があったから。
「朝ごはん食べてソファでうたた寝しちゃったからさ、気持ち良さそうで、その」
「…放置したんやろ」
ちがーうっと心のなかで叫びながら、私はどうしたものかと頭を巡らせた。
「…」
「え?なに?」
「お仕置きや」
「え!?ちょっと、うわ!!」
途端に目の前がぐるりと回って、気付けばの腕の中。
いわゆるお姫様抱っこでのしのしと部屋に進んだが向かったのは…
「あ!ちょっと、駄目!今綺麗にしたばっかり…」
「投下!」
ぼふっと落とされたのは、整えたばかりのベッド。
無数に付いた皺やシーツの歪みに非難の声を上げようとしたけれど、
続けて覆い被さってきたにその権利を奪われた。
「隅から隅までまるごと食べたるさかい、覚悟しいや??」
「ば、馬鹿…」
こうして、私の努力も空しくベッドは乱されてしまった。
でも、ぐちゃぐちゃの方が整えがいがあるってものだよね。
また眠ってしまったを見つめて、私はそう思った。
「私もちょっとだけ…」
今度は拗ねられないように。
の隣で、私も目を閉じた。
end.
拗ねちゃう忍足氏。いかがですか?(笑)
私もベッドを綺麗にするの好きです。
けど、包まってる方勝ちだな(笑)