≫秘密の言葉≪


「…なんやねん」

週末のデート。
7日ぶりに味わうの唇は、たまらなく甘かった。…けれど。

から聞こえた非難を帯びた声は、きっと私の眉間の皺を見たせい。

そりゃ、そうだよね。
キスをした相手が怪訝な顔をしたら、誰だって「なんやねん」だと思う。

は私の眉間に親指を当てて、刻まれた皺を消すように伸ばし始めた。

「…巧過ぎる」
「は!?」

私の呟きに、はとうとう手を止めた。
もちろん、皺はまだ消えていない。

の、キス!………巧過ぎる」

実は前々から思っていたことだった。

がどんなに大人びていても、それは生まれつきではない訳で。
私を翻弄し尽くしてしまうこのキスには、それ相応の経験が必要だった…はず。

それを思うと、どうにもこうにも眉間に皺がひょっこり、なのだ。
…大人げないとは思うけど!

「なんや、ヤキモチ妬いてるん?」
「ヤキモチ…って訳じゃない、けど」

大切なのは、今の
大好きなのは、今の

過去を掘り返すなんてルール違反。
そんなことはわかってる。

でも、でも…やっぱり。

「んむ…っ」

知らず突き出していた唇をつままれて、おかしな声が出てしまった。

「も、もう!何!?」
「…

私の声に被さるようにして、が優しく私を呼ぶ。

「好きこそものの上手なれって言葉、あるやろ?」
「…え?う、うん」

私の唇から離れたの手が、今度は髪に触れてくる。

のこと好きでたまらん気持ちをそのままぶつけたら、あないなキスになるんやけど」

さらりと言われた言葉と、覗き込まれた視線の熱さに、私はどきりとした。

「あかんかった?」

それってつまり、のキスの巧さは過去のお陰じゃなくて…。

「…っずるい…」

そんな風に言われたら………嬉しくなってきちゃうじゃない。
我ながら単純だけど。

思わず視線を逸らした私に、なぜかは体重をかけてきた。

「ほんま、ずるいな」
「…?ちょ、ちょっと…」

そしてそのまま、顔が近付いて…。

「俺にこないなキスさせるなんて、ほんまずるいわ、…」
「……んっ」

秘密を知った後のキス。
その味は…。


end.


あまーい!!(笑)
久々の夢粒、甘さをお楽しみいただければ幸いです…!