≫二日酔い≪
重い…。
いつもなら得られるはずの朝の爽やかさはどこへいってしまったのか。
頭も、胃も、両の瞼も、これ以上ない程に重たかった。
一体どうしてしまったんだろう。
この気分の悪さ。
これじゃあまるで……。
「“まるで”やなしに、二日酔いやろ、思いきり」
「!!それは言わない約束でしょ!?…ってイテテ〜…」
自分で上げた声が頭の中で響き、私は思わず頭を抱えた。
そう、大きな声では言えないけれど、私は今二日酔いで寝込んでいる。
もちろん今日のデートはおあずけ。
は看病がてら、我が家に遊びに来てくれている。
「慣れへんもんをガブガブ飲むからそないなるんや」
情のカケラもない物言いに、私は恨めしそうな視線を上げた。
「…なんか今日、冷たくない…?」
そりゃ、デートを潰したのは申し訳ないと思っているけどさ。
「さよか?酒に飲まれてウンウン言うとる彼女んとこにわざわざ来てやってんねんで?
じゅ〜〜〜〜〜〜〜っぶん優しいやろ」
だから、言い方にトゲがあるってば。
私は布団を鼻まで引きずり上げて、こっそり拗ねた。
「…俺かてと遅うまで酒飲んだりしたいんやで」
「へ?」
ぽつりと言われた言葉を理解することができなくて、私は間抜けな声を出す。
「せやけど、俺はまだ未成年やし?だってお仕事の付き合いっちゅーもんもある訳やし?」
納得せなあかんやん?
私に背を向けた状態で立っているから、の顔は見えない。
けど、たぶん、これって…。
「………、もしかして、拗ねてる…?」
向けられた背中が、その瞬間にピクリと動いた。
「…拗ねてへん」
水、と言ってコップを片手に振り向いたの表情は、それでもやっぱり拗ねているようにしか見えなくて。
「ありがと」
半身を起こして受け取った時には、への愛しさでいっぱいになっていた。
「…?」
「の二十歳のお祝いは、2人で飲み会しようね」
コップを床に置くと、私の両手はそのままの頭を包むように抱き寄せる。
ちゅ。
いつもなら考えられない、私からのキス。
しかも、それこそお酒の力だということにしたいくらいに、想いを込めてしまっていた。
「…っご、ごめん」
我に返って慌てても、遅すぎるんだけど。
「の舌…」
「え?」
見れば、珍しくも動揺している。
「あかん…お酒の味、知ってしもたわ」
「!」
それも、極上の。
「これで飲兵衛になったら、の責任やな」
そう言うの微笑みは、最高のアルコール度数で。
私の頬は、見る間に染まってしまった。
end.
忍足氏との飲み会だなんて…いいなぁ〜♪
というか、もう既に貴方に酔っていますよ。実際。(逆ギレか!?)