≫金曜日の夜に≪
「ー…なんでそないにもそもそすんねや。イイコにしとき」
金曜日の夜、ベッドの中で。
さっきから寝返りばかりの私に、がそう注意した。
だって、だって。
私はもう一度寝返ってに向き直ると、恨めしそうな視線を投げた。
「…眠たないんか?」
「う…眠い…けど」
「けど?」
「勿体無いんだもん!!」
布団を跳ね飛ばす勢いで、私は叫んだ。
それから、金曜日の夜の素晴らしさを説き始める。
「土曜日に入っちゃうと、あっという間に月曜日になっちゃうじゃない?
これから土日と2日お休みだーって金曜日の夜が、1番幸せなの!」
そして幸せは1分でも長い方がいいじゃない!
「…阿呆か。時計見てみ?すでに土曜日突入や。
いくらが寝ないで頑張ったかて…」
「そこは気分よ、気分!」
あー…口に出したらさらに勿体無くなってきた。
やっぱり、起きてよう。
私は布団を抜け出そうと身体を起こした。
「ほな、俺は寝んで」
「…え」
なんとなく、も付き合ってくれるかな…なんて自分勝手にしてた
期待だったけど、拒まれたらやっぱり少しショックだった。
「ほんでは夜更しして、明日は寝坊すんねやろ?
残念やなーせっかくの俺と過ごす土曜日やってのに」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って」
どんどん進んで行く話に、私は待ったをかける。
ふいに、が私の頬に手を添えた。
そして大好きな笑みを浮かべる。
「あっという間なんかやない、充実した休みにする自信、あんねやけど」
「…………寝る」
負けた。
イイコやな、と頭を撫でられながら布団の中に落ち付いて、
でも、これってなんだか…と思った瞬間、からもこんな言葉が。
「俺、保育士とかむいてんのとちゃうやろか」
「!やっぱり子供扱いされてる!!」
思わず顔を上げた。
「…冗談やって。それに子供にこないなこと、せぇへんで?」
「…っ」
がくれたおやすみは、確かに恋人仕様で。
私はそのまま、眠りにおちた。
end.
忍足氏に寝かしつけてもらえるなら、子供扱いでもいい(笑)