≫ポップコーン≪


、キャラメル味が好きやったよな?」

目の前に差し出されたポップコーンのカップ。
中から私の大好きな甘い香りが漂ってくる。

「うん!」

満面の笑みで受け取った私に、も嬉しそうに微笑んだ。

今日はとの映画デート。

「映画見るにはポップコーンがないとあかんね」

の主張に私もうんうんと大きく頷く。

「これがないと映画見てるーって雰囲気が出ないよね」

言いながら、早速2、3粒頬張った。
口に広がる幸せに、思わずため息。

「…美味しい〜…♪」
「とろけそうやな、のほっぺた」
「!」

言われて、緩んだ表情を慌てて引き締める。
うう…だらしない顔見られた…。

「…くく…別に無理せんでもええねんて」
「…〜〜〜ッ」

わ、笑われてるし…!

「…絶対馬鹿にしてるでしょ」
「してへんしてへん」

そう言って、もポップコーンを口に入れた。
その顔をじっと見つめる。

「ホラホラ、もしてよ。だらしない顔」
「そない言うたかて、元がええからなぁ…どんな顔も様になるっちゅうか…」
「…あっそ」
「うわ、冷た」

そんなやり取りをしているうちに開始のベルが鳴り、場内が暗くなる。

「お、始まるで」

私もシートに深く腰掛け直し、スクリーンに目を向けた。

今日の映画は、もちろん好みのラブロマンス。
それまではどちらかというと苦手なジャンルだったけど、
私も随分変わったなぁ…。

本編前の予告をぼんやり眺めながら、そんなことを思う。

見ていても理解できないときめきや切ない気持ちが、
に恋してわかるようになったから…なんだろうな、多分。

「…」

自分で思いついておいて、なんだか恥ずかしいんですが…。

その場を取り繕うように、急いでポップコーンを口に入れる。
せっかく話題の新作を見に来たんだし、映画に集中しなきゃ!

…と、ふいにポップコーンではない何かが手に触れた。

「?」

それは、カップに手を伸ばしたの指先。

「あ、ごめ…」

でも、譲ろうとした手は引っ込まず、逆に握られてしまった。

「…え」

しかも、あろうことかはそのまま私の手を自分の口元に持って行って…

……ちゅ。

「…ッ!!」

まさかの行動に私の頭は真っ白になる。

「ん?…間違えて食べてしもた。堪忍な」

艶っぽい囁きは明らかに確信犯の声音で。

の指、キャラメルの味したで?」

覗き込まれた瞳は、私を煽ろうとする色に染まっていた。

「…え、映画…ッは、始まってるよ…!?」

だから、そう囁き返せたのは奇跡に近かったと思う。

実際スクリーンは本編を映し始めていて、
はちらりとそちらに視線を向けると、

「しゃあないな…」

と、手を離してくれた。

「せやけどポップコーンが終わったら、の番やで?」

なんて、トドメの煽りは忘れていなかったけれど。


…結局、私が映画に集中できなかったことは言うまでもなく。

気が付けば流れていたエンドロールを眺めながら、
への恨み言を呟く派目になるのでした…。


end.


…妄想が炸裂しております…!
「ポップコーン」というより…食べられたいだけ…!?
………。(否定できず)