≫うなじ≪


俺の鼻先にご馳走がぶら下げられて、3日が経った。

……ほんまに俺、どうにかなってしまいそうやねんけど」

俺は背中からを抱き締め、懇願するようにそう囁いた。

「どうにかって……大袈裟だなぁ」

が笑った振動が、腕の中に響く。
笑いごとじゃあらへん。

痺れを切らした俺は、とうとうご馳走に口を付けた。

ご馳走――のうなじに、唇で触れる。

「あっ……ちょっと、コラ! 離れなさーいっ」
「嫌や」

最近結構蒸し蒸しするねーと言いながらが髪をアップにした時、俺は神様に感謝した。
綺麗で美味しそうなのうなじが、大放出になったんやからな。せやけど……

「駄目だってば! くすぐったい! 、怒るよ!?」

全力で抵抗されて、俺は渋々身を引いた。

なんでや……大放出しといてオアズケやなんて、俺めっちゃ辛いやんか。
誘うように揺れるポニーテールの尻尾が、恨めしいわ。

……」
「そんな憐れそうな目、しない!」
「充分憐れやし」

あんまり『待て』が長いと、忠犬ハチ公やって逆ギレしたなるっちゅーねん。

しかしそこは俺、氷帝一オトナな忍足さんや。
話し合いの場を持とうやないか。

、それやったら髪下ろし」
「え? なんで? 暑いよ」
「……」

アカン。
ハチ公が首輪ぶち切って頭ん中走り始めよった。

「ええか、。今から10数えるからな」
「?」
「その間に髪下ろすか、ハチ公の好きにさせるか、決めんねんで?」
「ハチ公? 、なんか変だよ?」

そう言って、が首を傾げた。
ひょこっとした可愛え仕草に、揺れるポニーテール、……誘ううなじ。

「……っ」

俺は声には出さないカウントを始めた。

いーち、……じゅう!

「もう我慢でけへんっ」
「ちょ、なに!? うわ、……っ」


それから、約1時間後。

「もー! の馬鹿!!」

恋人のへなちょこパンチを食らいながらも、のうなじを満喫した俺は幸せやった。

「こんなにキスマーク付けちゃったら、髪下ろしておくしかないじゃないっ」
「せやなぁ、せっかくのうなじが隠れて残念やけど……」
「そーじゃないでしょ!!!」

反省しなさい! と、飛んできた2発目の拳を軽く受け止めると、そのままを引き寄せる。

のうなじ、大好物なんやもん。せやから、な?」
「!」

おかわり、と囁くと、俺は再びに口付けた。


end.


久々の更新でございますっ
夏は女の子のうなじ祭で嬉しい季節ですよね♪
……ハイ、オヤジわんこ出現!(笑)